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​表現者の権利と危機管理を考える会

​訴訟に関する活動報告

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【「調停に代わる決定」の確定のご報告】

2021年6月(令和3年6月)に合同会社地点(劇団地点)より京都地方裁判所に、地点と元劇団員Aさんとの間に和解契約が締結されたこと等の確認を求める訴訟を提起されました。

2023年3月29日(令和5年3月29日)には地点の訴えをすべて却下・棄却する判決が言い渡されました。原告である地点がこの判決に対し控訴したため、大阪高等裁判所で審理を続けてまいりました。

この度、2024年9月(令和6年9月)に「調停に代わる決定」が確定したためご報告いたします。

 

控訴審では、2020年3月5日(令和2年3月5日)に和解契約が締結されていたか否かが強く争われ、元劇団員Aさんは和解契約は締結されていなかったという立場にありました。裁判所は紛争の実情に鑑み、判決によってその当否を決することなく、双方の互譲によって早期に終局させることを相当と認めて民事調停法17条に基づきこの決定がなされました。

控訴審の終了については、事実に則して「和解」ではなく「調停に代わる決定」の確定と表記いたします。

 

訴訟を提起されてからのAさんは、ご自身の身に起きたことを記録し、事例として残したいという思いから、判決に進み最高裁で争うことや別訴に応じることも辞さない覚悟で臨み続けていました。Aさんの目的に照らせば、判決を得て自由な発言ができる環境を守ることはとても重要なことでした。また、Aさんにとってご自身に起きた経験を語ることは、回復の過程で重要な役割を果たすことでもあります。しかし、訴訟を提起されてから3年、それ以前の過程も含めるとさらに長い年月が経過しており、Aさんにのしかかる負担は増していく一方でした。

Aさんは「調停に代わる決定」が確定するまでの間、さまざまな可能性について熟考し、何が最善の判断なのか注意深く検討を行っていました。今の状況とこれまでの経緯の両方を照らし合わせ、達成したいこと、できること、できないことを根気強く見通そうとしているように見えました。そしてその判断に至るには、Aさん自身の思いだけではなく、波及されうる影響についても考慮しなくてはならず、着地点をどこに見出すかはとても難しい問題だったと思います。

 

最終的には、劇団地点からの提訴により始まった訴訟という土俵からおりて、これ以上の精神面、身体面、経済面の損失を防ぎ、自身と周囲を守ることが必要と考えられたようです。

Aさんの選択を私たちは支持します。

個別の事情については差し控えさせていただきますが、今回、「調停に代わる決定」として訴訟が終局したことは、Aさんにとって意義があると私たちは考えています。

「和解」という表現が想起させる、「仲直り」や「和やかに打ち解ける」イメージ及びその波及する影響はAさんを長い間悩ませていました。

裁判上の「和解」と「調停に代わる決定」は様々な点で異なるものであり、正確を期すため「和解」という言葉は使わずにご報告させていただきます。

 

訴訟手続きの中で行われる「調停に代わる決定」について、一般的にどのようなものかご説明させていただきます。

「調停に代わる決定」は、裁判所が両者からの聞き取りをもとに適切と思われる解決案を示すものであり、「和解」が合意という積極的な意思表示で成立するのに比して、「調停に代わる決定」は異議を申し立てないという消極的な行為により確定します。

両者の主張や感情面の対立が激しく、積極的な「和解」(全面的な同意)が難しい場合などに裁判所の職権で採用されることがあります。

民事調停法17条に制定されているため、通称「17条決定」とも呼ばれます。「判決」とは違い、当事者に意思表示の余地を残すため決定の受取りから2週間の異議申し立て期間が設けられています(民事調停法18条)。どちらかから異議の申し立てがあった場合には決定内容は無効となり、両者ともに異議を申し立てなかった場合に確定となります。

 

上記の説明はあくまで一般的なものです。

訴訟の進行についてはケースにより異なること、裁判上の「和解」にもさまざまな実情があることを、補筆させていただきます。



 

以下に、この度、裁判所から出された「調停に代わる決定」のうち、口外可能な条項を掲載します。

全ての条項及び情報を公開することはできず、それにより生じる誤解も避けがたいことかと思いますが、少しでも内容の本質が伝わればと思います。

 

(注:控訴人=合同会社地点 被控訴人=Aさん)

前文 本案訴訟(請求の趣旨及び原因は、別紙のとおり)は、当事者間において、令和2年3月5日に別紙和解書記載のとおりの和解契約が締結されたか否かが強く争われている事件であるが、当裁判所は、紛争の実情に鑑み、判決によってその当否を決することなく、双方の互譲によって早期に終局させることを相当と認めて民事調停法17条に基づきこの決定をする。

 

 

4 控訴人と被控訴人は、今後、互いに誹謗中傷するなど相手方の名誉・信用を毀損し又は業務の妨げになることをせず、本決定の内容及び本決定に至った経緯について、大阪高等裁判所の調停に代わる決定によって紛争が終局したこと並びに本決定前文、本項、6項及び8項の各記載内容を除き、本決定に定められた義務の履行に必要な場合や法律上又は契約上の義務の履行による場合以外第三者にロ外しない。

 

6 被控訴人は、令和2年3月5日の和解契約が金銭賠償を主目的とするものではなかったことを確認し、同和解契約において控訴人が被控訴人に対して支払うべき解決金とされた160万円を、控訴人に対し、請求しない。

 

8 被控訴人は、令和2年3月5日に別紙和解書記載のとおりの和解契約が有効に締結されたと控訴人において認識したことに相当の理由があったことを認め、控訴人がそのような認識の下に令和2年3月5日から本決定確定の日までにした言動についてその責を問わない。


 

上記「調停に代わる決定」の条項にある通り、Aさんは一連の問題提起における目的をより明確にするため、地点が支払うべきとされていた解決金の請求を放棄しました。

そして本案訴訟の争点であった令和2年3月5日の和解契約については、双方の互譲の精神のもと、令和2年3月5日から決定が確定するまでの間、合同会社地点が和解契約が有効に締結されたとの認識のもと行った言動についてその責を問わないこととしました。

 

なお、今回の「調停に代わる決定」が確定したことにより、当「表現者の権利と危機管理を考える会」のHP内の記事の整理が必要になりました。今後、会のメンバーで協議し、順次対応していく予定です。

 

Aさんと劇団地点(合同会社地点)との一連の訴訟の根底にあった社会的なイシューは表現の現場に未だ残っています。また、控訴審は終了しましたが、Aさん自身の回復には時間を要することが想像されます。今後もメンバーそれぞれが当事者意識を持って向き合っていきます。

 

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2024年10月27日(日)

表現者の権利と危機管理を考える会一同

【お知らせ】

 
合同会社地点(劇団地点)よりAさんへ提起された裁判について、2023年3月29日に京都地方裁判所において、原告の請求を却下および棄却するとの判決がありました。
同判決に対し、4月12日、原告側である合同会社地点(劇団地点)より、控訴の申し立てがございました。
同裁判は今後、大阪高等裁判所での控訴審にて審理されます。

弁護団と控訴状および控訴理由書の内容を確認したうえで、対応してまいります。

また、劇団地点がHPで公表している協議については、Aさんの許可を得て掲載されたものではありません。

地点からAさんに協議の申し入れもなく、両者間に協議の約束はありません​。


控訴審に進むにあたって引き続きご支援・ご関心をお寄せいただければ幸いです。

どうぞよろしくお願いいたします。

【判決のお知らせ】

 

合同会社地点(劇団地点)よりAさんへ提起された「和解契約存在確認等請求事件」の判決が、2023年3月29日(水)、京都地方裁判所より言い渡されました。

【判決主文】

1 本件訴えのうち、請求の趣旨(1)及び(3)の請求にかかる訴えをいずれも却下する。

2 原告のその余の請求を棄却する。 

 

以上の判決により、原告​(合同会社地点/劇団地点)側の請求は却下および棄却されました。

【訴訟概要】

原告:合同会社地点

被告:Aさん

請求:和解契約存在確認請求等

 

【原告側の訴え】

(1) 原告は、被告との間で別紙和解書記載のとおりの和解契約が締結されたことを確認する。

(2) 原告と被告との間において、令和2年3月5日に締結された別紙和解書の契約が有効であることを確認する。

(3) 被告は、別紙和解書第6条記載の行為をしてはならない。

(4) 訴訟費用は被告の負担とする。

今後の計画等に関しては後日改めてご報告差し上げます。

引き続きご関心をお寄せ頂けますと幸いです。

2023年3月29日(水)

表現者の権利と危機管理を考える会一同

​【2022年10月27日(木)尋問に​ついて

2022年10月27日(木)京都地方裁判所にて第九回期日(Aさん・証人の尋問)を終えましたことをご報告させていただきます。

今後は最終弁論書面の提出を経て、2023年3月29日(水)に判決を迎える予定です。

 

今回の裁判では、合同会社地点が原告となり、地点とAさんの間に和解が成立しているかどうかのみが争われています。Aさんが一貫して求めているハラスメントについての議論は争点の外に置かれたまま、ハラスメント加害行為者が被害者を訴えている裁判です。

 

この裁判が地点の目指すゴールの何合目に位置しているのかは分かりません。2020年12月には地点より2500万円の損害賠償請求を予告する文書が届いています。今回の裁判で提出された書面においても「今後Aさんの行為を問題とする」との文言もあり、この裁判の判決を迎えた後どうなっていくのか、先行きが見えず不安な日々が続いています。

 

今後もご関心をお寄せいただけますと幸いです。

【訴訟概要】

 

原告:合同会社地点

被告:Aさん

請求:和解契約存在確認請求等

【訴訟記録】

2023年11月30日(木)

控訴審 第二回期日

Aさん・弁護団より第一準備書面を提出

 

 

2023年9月1日(金)

控訴審 第一回期日

合同会社地点より控訴理由書を提出

2023年3月29日(水)

判決言い渡

 

 

2023年1月24日(火)

第十回期日 弁論終結

Aさん・弁護団より第四準備書面を提出

合同会社地点より原告第五準備書面を提出

2022年10月27日(木)
第九回期日

被告、証人への尋問実施

2022年9月22日(木)
第八回期日
Aさん・弁護団よりAさんの陳述書を提出

2022年7月28日(木)

第七回期日
Aさん・弁護団より証人の陳述書を提出
合同会社地点より原告第四準備書面を提出

2022年6月2日(木)

第六回期日

合同会社地点より、訴えの変更(追加的変更)申立書を提出

Aさん・弁護団より訴えの変更に対する答弁書を提出

2022年4月28日(木)

第五回期日

Aさん・弁護団より、第三準備書面を提出

合同会社地点より、原告第三準備書面を提出

2022年3月24日(木)

第四回期日

Aさん・弁護団より、第二準備書面を提出

合同会社地点より、原告第二準備書面を提出

2022年1月25日(火)

第三回期日

合同会社地点より、原告第一準備書面を提出

 

 

2021年12月7日(火)

第二回期日

Aさん・弁護団より、第一準備書面を提出

 

 

2021年9月15日(水)→2021年10月26日(火)へ延期

第一回期日

Aさん・弁護団より、答弁書を提出

 

 

2021年7月16日(金)

京都地方裁判所より第一回口頭弁論期日呼出状及び

答弁催告状送達

 

 

2021年6月18日(金)

合同会社地点より京都地方裁判所へ訴状提出

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